「PLUTO」浦沢直樹

自分は、手塚治虫鉄腕アトムにおける「地上最大のロボット」のアニメ版を衛星NHKで二年くらい前にひょっこりやっていたのを偶然みた。
ある王国の王様が世界で一番強いロボットを作った。そのロボットが世界で一番強いことを証明するために、世界中で名だたるロボット達を倒していく。もちろんその中にアトムも含まれている。王様のロボット「プルートゥ」は100万馬力。アトムは10万馬力なので、戦う前から勝負は決まっている。そうこういっているうちにアトム以外のロボット達は全滅。アトムのかねての願いを聞き入れ、重い腰を上げたお茶の水博士はアトムを100万馬力へとパワーアップする。最後の決戦は互角であったが、その最中に、決戦場近くで突然火山が大噴火。このままではふもとの人々が全滅してしまう。敵同士ではあったアトムとプルートゥではあったが、事ここに至っては共同戦線。二人で力をあわせ噴火を納め、無事にふもとの人々は助かる。
と、ココまでなら普通の物語だが、ここで終わらない不条理が手塚治虫なのだ!!
一件落着やれやれとしているところに、突然謎のロボットが登場!最強ロボットとうたわれたプルートゥを一撃であっさり倒してしまう。あまりの事に唖然とする一同に、プルートゥを作った高名な天才科学者が出てきて、プルートゥの製作依頼者の王様に対して一言「このように最強のロボットを欲しがることは無意味。最強のロボットができたとしても、スグにそれを上回るロボットが出てくるだけである。愚かな開発競争はよしなさい」と説教をたれる。何とこの唐突に現れたロボットこそは200万馬力あるロボットであった。そしてこの天才科学者はこの開発競争を王におもいとどめさせるためだけにプルートゥとそれを越える最強ロボット(名前忘れた)を作ったのであった。
...まるで説教が説教をなしていない、身も蓋もない最低の無常観。
コレじゃどう考えたってプルートゥはおろか、彼に倒されてしまったロボット達もただの無駄死である。なんじゃこりゃ?
子供心に植え付けられたトラウマってのは、大人になってから払拭しようたって、しきれるものではない。当時子供であったであろう直樹少年は、そんな思いを胸に秘め、一体どんな大人になったのであろうか?
その答えが本書にある。手塚ファン必読。

PLUTO (1) (ビッグコミックス)

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