「暗号解読」サイモン・シン

有名なアメリカンジョークがあるんだけど...
アメリカがアポロで月へ行った頃、重大な問題に遭遇した。宇宙の無重力状態ではボールペンが使えなかった。そこでNASAは何億ドルもの研究資金を投入して遂に『無重力空間でも字が書けるボールペン』を開発した。一方そのころソビエト連邦の宇宙飛行士は鉛筆を使っていた」
ドイツがエニグマっていう最強の暗号機械を使い、作戦伝達を行っていた。それを英国の天才数学者チューリングは「ボング」という解読機械を開発し、ドイツの暗号文をすべて解読して、ドイツ優勢の戦局を一気に逆転させてしまった。最新数学技術の開発合戦。その勝者こそ歴史の勝利者である!!
というふうに散々盛り上げておいて...
ところでそのころアメリカでは、ネイティブアメリカンの現地語をそのまま暗号として通信に使っていた。アメリカ人以外でそんな言葉を知っている外国人はいないので、その言葉がそのまま暗号状態になってしまったのだ。
暗号文の一番の特徴ってのは、その文面を受け取った方も、その文面を解読しなければならない。それに最低2時間くらいかかるのだが、ネイティブアメリカンの現地語の場合は、その言葉を知っている人がいれば受け取った瞬間に意味がわかる。といった話。
ああ、人生の無常さよ...最高の暗号機械を突破する最高の解読機械を発明した天才数学者チューリングは、その後同性愛容疑で逮捕されそうになり、その逮捕前に自殺してしまった(当時の英国では同性愛は違法)なんという人類的損失。コンピュータの歴史はこのため十数年発展しなかったことはあきらかだ。
ってな内容は本文のごく一部なのだが、妙に気になるところだった。
実は素数と暗号の深い関係を、その入門編といったところが本書の目的だと思う。現在のインターネットにおける電子商取引では暗号技術は必要不可欠なモノであり、何故それほど重要かということが解説されている。
このころから自分は「素数」というのにとりつかれてしまったようで、それが如何に重要なモノかは理解できないけれど「なんかとんでもない存在」「人間の根源にかかわる数列群」とでもいうものになってしまった。ネットを「素数」で検索して「素数表」(2から順番に素数を列挙している表)を印刷して持ち歩いた次期がちょっとあった。10,000までの素数くらいがちょうどいいので、あなたもお守り代わりに「素数表」を持ち歩いてみてはどうか?
この本はとりあえず理系人間ではなくても結構おもしろいのでオススメ。一見難しそうな事柄を実にわかりやすく丁寧に説明してくれる。コレこそサイモン・シンの真骨頂!多分日本中の公立図書館には必ずおいてある本であることは間違いないので読んでね。

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで