今日のバローズ

idonokaibutu2004-08-17

 最近ちょっとお休み気味だった「金星シリーズ」久しぶりに読むました。やはり購入して手元に置きいつでも読める状態にしていると、いつまでも読みません。こういう性格だから貸出期限の決まった図書館は自分にピッタリです。
 さて、お待ちかねシリーズ最大の白眉モノ「金星の独裁者」ですが...「マチューメフィス」の声も高らかに独裁者メフィスをたたえる党員達。今更いうまでもないが、ドイツヒトラー率いるナチスへの痛烈な批判である。それも現代じゃなくてファシズムの嵐が吹き荒れるまっただ中、あのチャップリンの名作「独裁者」よりも早くこのよう作品を作ってしまったところにバローズの偉大さがある。
 相変わらず主人公カースンは情けないくらいに弱い。例えば敵をとっとと光線銃で撃ち殺せばいいものを、そんな卑怯なまねはできないとばかり一対一の剣による戦いを挑むのだ...「しまった、手強いぞコイツ」で大ピンチ。結局連れ合い美女の光線銃が敵をうち倒し助かる。マヌケ。こんな調子で危機また危機なのだが、カーソンはほとんどなにもできず、相変わらず偶然だったり、仲間の助けだったりして窮地を切り抜ける。まあ、この程度のご都合主義などはバローズ作品にとっては仔細なことである。何せイマジネーション豊富な奇才がその筆致でもって奇妙な世界を構築してみせる。コレこそがバローズの醍醐味だからである。好きな人にはたまらないが、嫌いな人はきっと一冊だって読み通せないであろう。かなり読者を選別するのである。
 選ばれたからエライというわけではないが...そうこういっているうちに主人公カースンも結構すれっからしになってきて、腕っ節のない分を口八丁でその場を凌ぐようになってきた。はったりかましまくりたおし「それは私のお守りだ。欲しければあげるが、私以外の人間が持つと死ぬぞ」虎の子の光線銃を取られそうになったときのセリフ。はったり以前、みえみえの大ウソかます。コレが通じてしまうのだから金星人というのはわけがわからん。まあ、第三巻頃に来てようやく金星人の扱い方がわかってきたのかカースン?といった感じだな。
 写真は羽織袴姿で「マチューメフィス」を叫ぶ武士。ではない。