ああ滝本

 滝本竜彦「ネガティブハッピー・チェンソーエッジ」読了。小田原出張からの帰路、新幹線内で一気に読了。ああ、あんたはなんでそんなに悲しい青春なのだ。自分の青春時代と比較しても...そういえば自分の一人暮らし時代に数ヶ月くらいはひきこもった覚えはあるが...それでも今思え返せば人生の黄金時代であった。今の自分より少なくても100倍は楽しかった。
 ま、それはともかく、あのマンガ化もされている「NHKにようこそ」の作者のデビュー作である。ずっと読みたかったのだが、文庫化されたこの機会に購入して一気読み。素晴らしい話である。
 滝本さん、あなたには「和製ディック」の称号をあげよう(←勝手にあげるな)
 毎夜チェンソー男の脅威から世界を守る戦いを孤独に続ける高校生美少女戦士。その戦いに巻き込まれてしまった主人公の男子高校生のお話。で、チェンソー男も美少女戦士が何故超越的能力を発揮して理不尽なる戦いを、毎日、繰り広げなければならないかという説明などは一切ない。そしてこれはやるせない青春の脱出口を探しもせずに、日々怠惰に暮らしていた高校生男子の劇的活劇などでは当然なく、タダ単に青春ドラマ...メタ青春ドラマ...である。青春ドラマであるからには、青春ドラマの鉄の掟を現代なりにきっちり踏襲している。つまり「そんな理不尽なことが現実にあるわけねえじゃねえか〜!!。でもなんか感動したぞ俺は〜!!。クソ涙がとまらねえ〜なみだじゃねえ〜これは心の汗ジャイ〜星〜(星飛雄馬)...という本である。
 読め、読め。読め、読め、読め、読め、読め、読め〜これを読まずして現代を語るべからず。
 なんか自分はライトのベルを勘違いしていた。表紙のイラストからしてこれはライトノベルだよね...まさか厄年を過ぎた自分が、高校生御用達のライトノベルにはまってしまうなんて...偏見を捨てろ。人の意見なんか聞くな。自分で見て聞いて読んで得た情報だけが自分にとっての有効な情報なのだ。そして引きこもるな。外へ出ろ。外界は悪夢だらけだ。渡る世間は鬼だらけだ。それでも外へ出ろ。外へ出ることから始まる。人は人と出会い、人生の時間を一部でもいいから共有しつつ生きていく生き物なのだ。先のことは考えるな。今が一番大事で、貴重な瞬間なのだ。
 ああ、滝本。死ぬな。生きろ。