「快男児」夢枕獏

 実は夢枕獏ってあまり好きな作家じゃなかったので、飢狼伝とか、キマイラを数冊くらいしか読んでいない。あの独特な文体...なぐられた男のうめき声が「がっ」改行「ぐっ」改行「ごへっ」改行...行間を読むじゃないけれど、あの過剰な改行の空白がどうしても馴染めなかった。今回久しぶりに読んでみると...あ、なるほど。一つ一つの文章をすっきりまとめるために、短い文章で簡潔に表しているんだなと思い直した。ここのところ小栗虫太郎を始めとする、妙に難解で解読しかねる文章ばかり意地になって読んできたので、かえって新鮮である。
 肝心の内容だが、キャラクター小説の王道を行くようなエンターテイメントである。バトルあり、エッチあり、智恵子抄あり中原中也あり、訳が分からないエンターティメントである。途中から、なぜか描写が伝奇小説的どろどろな展開になっていく。「なにこれ?」な内容なのだが、なにはともあれ、家畜人でグシャグシャになってしまった自分の頭には、一風のそよ風のような小説である。(←そうか?)
 あまり夢枕獏読んでないのでわからないけど、これって獏さんの普通の部類に入る作品なのですか?キマイラすらロクに読んでいない自分には判別不能である。