「煙か土か食い物」舞城王太郎

スバラシ、ワンダホー。前作「阿修羅ガール」の訳のわからない展開に比べて理路整然とパンク文体が爆発しつつ絶妙に破綻を来していないスバラシイ作品。てか、こっちがデビュー作で阿修羅ガールよりも先だ。
人間死んでしまったら燃やされて「煙」になるか、埋められて「土」になるか、のたれて獣にかじられ「食い物」になるか、それだけじゃ...といいのこし死んでしまった主人公の祖母の言葉。同じように祖母のありがたい言葉としては「人間生きちょるだけでまるもうけ」(某連続テレビ小説より)言っていることは同じなのだが、舞城王太郎にかかるとこうなる。暴力が支配する家庭のなかで、暴力の中でこそ真の愛情が存在する...などという陳腐のストーリーなどは何にもなく、繰り広げられるバイオレンスの割には意外に少ない死者の数。ミステリの体裁を取ってはいるが、密室も暗号も真犯人も全く誰でもいいんじゃないかの暴れぶり。スピード感あふれる文章に一気読み確実な作品(自分は諸事情により一週間かかってしまったけど)一読をおすすめするが万人にはおすすめしがたい。ま、人生いろいろあるけれど、とりあえず死んでたまるかっ。
最近の自分の書評の傾向、内容をほめずに文体がいいとか文章がいいとか本当にほめているのかどうか意味不明なぶんしょうが多すぎる。あるいは「処女作品にはその作家のすべてがある」とか、ほとんど言い尽くされたパターンでほめたりする。いやいいんだ。本当にネタバレにならない用にミステリをほめようと思ったら、それくらいしか文章が書けない、文筆業には向いていない自分なのだ。とにかく一番好きな趣味は職業にしないで、ただ楽しむためにしておいた方がいいのだ(文筆業になるつもりだったのか?)
意味不明な自分の書評については、今始まった話ではないのでご容赦してください。この書評を読んで「うむ、舞城王太郎読んでみようか」などと考える人はたぶんいないであろうから。
というか、書評か、これは?

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)