「ハンニバル」トマス・ハリス

実は映画をまだみていない。脚本の段階であんまりなお話にジョディ・フォスターが出演を辞退したということと、最後に脳みそを生きたまま食われるという異様な話だということしか知らなかった。
ところで、脳みそを食われたのは誰か?
そればかりが妙に気になってしまい、いろいろ候補を考えながら読み進めた。結果は、上巻を読み終えた時点で「こいつじゃないか?」と考えた人物で大当たり。あたったからどうだというわけではないが...実際本文を読み進めると、その衝撃場面はものすごくあっさり簡潔に描写されていたので、これでは舞城王太郎の方が残酷だぜよと思った。これは民族的な多分宗教的なことが関係しているのではないのかなあ...つまり日本人はキリスト教文化圏の民族と違ってそれほど「人食い」という行為をタブー視していないのではないかと?ま、こういう難しそうな分析は、そのほうの専門家に任せるとして...
変な人間しか出てこない物語である。
唯一まともと思えたクラリスの上官クロッフォードはほとんど何も活躍しないまま、ラスト近くでストーリーとはほとんど関係なく心臓発作で死亡。後はまあ、死屍累々。まともな死に方の人間は皆無である。生き残った人間も変なやつばかり。ラストのこれはこれでいいのかという感慨よりも、もうこういう話なのだから、それをそのまま受け入れるしかないじゃないかという、カタルシスとは無縁のなんだかやるせない話になっていた。
かといって面白くないかというと、そうでもなく、いや、かなり面白い小説ではあるのだが...
とにかくこの作品は主人公のレクター教授より、敵対するヴィジャー兄妹という怪物のほうがキャラクターたちまくりである。これをもってレクター教授シリーズはおしまいとなるのか?それともかなり難しい展開となると思えるが続編が作られるのか?作者ではない自分では想像もつかないことである。
とりあえず、映画のハンニバルだけはチェックしておこう。
ただ、本書を絶賛するスティーブン・キングのあおり文句は明らかに過剰である。キングの方が面白いって...

ハンニバル(上) (新潮文庫)

ハンニバル(上) (新潮文庫)

ハンニバル(下) (新潮文庫)

ハンニバル(下) (新潮文庫)