「万物理論」グレッグ・イーガン

難しくって、サッパリでした(←おいおい)
とまあバッサリ斬っちゃうのもなんなんで、わからないなりに何とかあらすじを書いてみる。近未来のある時、人工島に三人の科学者が集まり、それぞれが考えだした究極理論「万物理論」を発表する。ただし本当に正しいのは一つ。映像ジャーナリストの主人公アンドルー・ワースは科学者の一人ヴァイオレット・モサラを焦点に取材を開始するが、モサラの理論が正しいと証明される事が宇宙の破滅につながると信じるカルト集団「人間宇宙論者」たちに命を狙われる。奇しくも理論を発表するはずだった研究者の一人は人工島に到着せず、彼を取材中のジャーナリストも行方不明。難しくも淡々と進む話は、後半になると二転三転して、意外な結末に。
以降はネタバレです。
人間宇宙論者とは「宇宙はその法則を見つけ出した人間の理論通りの振る舞いをする」というトンデモ科学の信仰者たちであり、その理論からするともっとも有力な理論を発見したモサラが宇宙の中心となり、その理論通りに宇宙が振る舞ってしまうと、宇宙がいずれは滅びてしまうと考えてしまう。そこで人間宇宙論者たちはモサラに対してバイオテロを仕掛ける。危篤状態に陥ったモサラは故国に帰るが、その理論の全貌をインターネットを通じて全世界に発表しようとするが、発表前に息絶える。しかし自動的に万物理論はネットで公開されるようになっており、ついに万物理論のなんたるかを知った主人公は、自分自身こそが宇宙の中心となったことを確信した。
こんなところだろうか?かなり違うかもしれないけど...つまりカルト集団「人間宇宙論者」の信仰「宇宙はその法則を見つけ出した人間の理論通りの振る舞いをする」が正しいと言うことを主人公が確信するというトンデモない結末なのでは?と思うのだ。それはさしおいて、すべてが丸く収まりめでたしめでたしとなっている。本当にそれでいいのか?てか、いつの間にか話が万物理論からトンデモカルト理論にすり替わっていたのか理解に苦しむ。それよりもラスト近くで発表されることとなるモサラの発見した万物理論とは...スミマセン何回読んでもサッパリわかりませんでした。
前回読んだ山本弘の「神は沈黙せず」と根っこの部分でつながっているようなお話に思えた。ま、これを持ってトンデモ本ということはできない。なぜなら二冊ともしっかりSFしているからだ。サイエンスフィクション。あくまでフィクションなのだからどんな宇宙論も基本的にOKだ。二人とも半端な科学知識やカルト知識ではととても書けない重厚な作品だ。これらの本を執筆するために一体何十冊何百冊の参考文献があったのではないかと思うと頭が下がります。
おもしろいんですけどね。おもしろいんだけど、文章がめんどくさくて読了までにエライ時間がかかってしまった。個人的には導入部の「死体蘇生」犯罪被害者の死体をごく一時的に復活させて、操作に重要な情報をその犯罪被害者地震から聞き出そうという技術の描写が印象的。残念ながら死体復活は恒久的なものではなく、ほんの一瞬、情報を聞き出す時間くらいしかもたないので、メチャクチャ非人道的である。舞台となった近未来がどのような時代であるかを説明するにはこれ以上な描写はないだろう。

万物理論 (創元SF文庫)

万物理論 (創元SF文庫)