「浄土」町田康

まるでSF小説
その昔、SFには「はちゃめちゃ小説」という分野が確立されていて、その頃を彷彿させる。登場人物たちはどいつもこいつもいやなヤツラばかりで誰一人として知り合いになりたくない。短編小説集。いや〜どもホント町田康の小説はいいなあ。自分の心にしっくりくるんだよな。
さて何編かピックアップしてみよう「あぱぱ踊り」踊りは町田康の小説にとっては大切なアイテムである。「パンク侍きられて候」でも「はらふり党」成るインチキ団体がハラを振って踊り、世界を救済する。本作ではただ単に奇妙な自信過剰男を称える踊りを踊る二人の不美人なのだが、訳がわからない。訳がわからないうちに話は終わる。考えちゃダメだ。町田康の小説はその瞬間瞬間を感じるんだ!!
「本音街」この町では建前を言ってはいけない。すべて本音で話さなければならない。社交辞令を廃した本音の素晴らしいこと。これなら誤解もなく人間関係も実に円滑にゆく。主人公は人生に煮詰まったときに本音街におもむき、思うさま本音をさらけ出してストレスを発散する。
「ギャオスの話」中野の北口講演に突然ギャオスが出現する。必殺技「超音波メス」で建築物を破壊しまくり、食事として生きた人間をむさぼり食う。自衛隊を出動させるが歯が立たず、首相はアメリカ軍の応援を頼もうとするが、外交上の問題で悩み、女装クラブへ逃避する。そんな日本の大ピンチに救世主の怪獣ガメラが....現れないんだ、これが。
このほかあと四編あります。え、こんな感想じゃ一体どんな内容だかわからないじゃないかって?そのとおり、内容などわからないのが町田康の最大の魅力だ。だから...
「瞬間瞬間を感じるんだ!!」

浄土

浄土