「ターンエーの癒し」富野由悠季

富野由悠季恨み節。
とにかく富野由悠季にとってガンダムというのは出世作でもあるが呪縛でもある。数あるガンダムシリーズを手がけ、不人気で途中打ち切りなどにもあいながら、やはり「ガンダム」といえば富野由悠季である。
ところが、どうもガンダムの版権収益は彼のところには入っていないようだ。
資本主義日本の奇妙なねじれ状態。ま、日本は資本主義じゃなくて会社主義(社会主義ではない)だからね。
それに対する恨み節が延々描かれているかと思えば、もうガンダムは勘弁して欲しいということで、民放衛星放送オリジナルアニメ「ブレンパワード」の監督をするも、やはりガンダムでついた傷はガンダムでしか癒せない。再びガンダムの指揮をとったのがこの「ターンAガンダム」である。
自分はファーストガンダムリアルタイムではあるが、実はファースト以外のガンダムはこの「ターンA」しか見ていない。しかもかなりおもしろかった。
そのころ富野由悠季鬱病であった。
そんな状況で週一のアニメ番組の仕事をするなんて無謀である。落ち込んだ富野由悠季をなぐさけてくれたのは進行係の女性のひざまくらであった...あ、一応監督は奥さんへのリスペクトは忘れていませんが...
「消えた漫画家」という本を昔読んだが、その中でも今を一世風靡しているハンター富樫の「漫画連載(幽々白書)で疲弊しきった心を癒すため、やはりマンガ(レベルE)を描き続けるしかない」といった記述があったが、ソレと同じような状況の富野由悠季であった。
消えたマンガ家 (¥800本)
現在「リーンの翼OVAでガンバッテいるみたいだが、やはりガンダム版権者としての権利を裁判して、裕福な版権生活者の暮らしを満喫して欲しいモノだが...裁判なんかしたら、より疲弊しそうだ。
ところで、この「ターンAガンダム」だが、ノベライズがある。作者はご存じ「亡国のイージス」の福井晴敏。基本設定と半分くらいののシノプシスだけしか教えてもらえなかった彼は、とんでもない独特なガンダム世界を構築して見せた。その名作は去年一冊の合本(元々は新書版二冊、文庫版なら三冊)となりよみがえった。タイトルは「月に繭、地には果実」なので間違えないように。
月に繭地には果実―From called “∀”Gundam
皆殺しである。ディアナとキエルは無惨。グエンはゲイをカミングアウト。ギムギンガナムはあっという間に犬死にである。自分的に気に入らないテレビ版のラスト1クール(西条秀樹が主題歌歌っている頃は大好き)がもし福井晴敏版のようだったらよかったのにと、邪悪に含み笑いをするのであった。
ま、テレビ版も最終回のラスト5分は本当によかったので、ソレまでの不満もふっとんでしまったのだが...ソレについての記述もこの「ターンAの癒し」にはあるので読んでみて欲しい。
よく考えたら、二十五年くらい前の「伝説巨人イデオン」当時から富野由悠季のエッセイって変わらないよな。
何より監督、奥さまをいつまでもお大切に...m(__)m

ターンエーの癒し

ターンエーの癒し