「樽」クロフツ

これほど有名な古典的推理小説となると、タイトルは知っていても意外に読んでいないことがある。自分もそうであったので、読んでみた。地味だ。奇妙奇っ怪な連続殺人事件があり、驚愕なトリックを鮮やかに解決する探偵が活躍する小説ばかり読んでいたので、このあまりの地味さかげんが逆に新しい。主な登場人物が刑事二人に探偵一人。その誰かが主人公というわけではない。主人公といわれる人物は出てこない。この三人とも驚異的な頭脳で真相を看破するタイプではなくて、地道に足で聞き込み、情報を集め、分析して犯人に迫るタイプだ。現在ならこういうのもありかなと思えるほど百花繚乱なミステリ界ではあるが推理小説黎明期にこんな地味で足下のしっかりした小説があったことにビックリだ。
しかも事件は最初に樽につめられ発見された殺人死体、ただひとつしか起こらない。今時こんな長いミステリで連続殺人なしなんて考えられない。このひとつの事件を地道に調査するのである。ま、正直単調で、退屈な事が多くある。ソレをさしおいても一度は読んでおく本であったなと、ちょっと反省。
というほどミステリファンではないんだけど...どちらかというと自分は探偵小説ファン(ソレもミステリでは?)

樽 (創元推理文庫 106-1)

樽 (創元推理文庫 106-1)