「009ノ1」石ノ森章太郎

せめて発表時に「石森章太郎」名義だった作品に関しては「石ノ森章太郎」表示をやめて欲しいと、切に願っている今日この頃。
いつもお世話になっている、自宅から歩いて1分のセブンイレブンで分厚い廉価本として販売されてあったのを発見して、即購入。そうか、今アニメになっているんだ。石ノ森再評価はまだまだ続く。そのうちアクマイザー3あたりもリメイクされるのでは?
さて本作009ノ1だが、リアルタイムとはちょっとずれた小学6年生頃に自分は見たことがあった。ちょっとませたガキンチョの同級生が「ほら、こんな石森章太郎を知らないだろう」とばかりに自慢していた。お兄さんがこっそり買っていた本を学校に持ってきていたと思うのだが、衝撃の内容を見せてもらうまえに「みせないよ〜」と仲間はずれにされてしまった(←おいおい)
「このタイトルなんて読むの?あ、女スパイだから女忍者をモジって『ぜろぜろくのいち』だっ!」当時から雑学蘊蓄少年だった自分は知ったかぶりしてそういったモノだった。モチロン
「残念でした〜これは『ゼロゼロナインワン』ってよむんだぜ!!」とやり返されたことは言うまでもない。
当時の出版元は朝日ソノラマ。確か同時期に松本零士の「大四畳半大物語」もあったと思う。自分たちの年代に「朝日ソノラマ」というブランドは、この様にかなり強烈な印象を残しているのだ。
無常観
009ノ1の世界には、そこはかとない無情な世界が広がっている。この物語では「ウエストブロック」と「イーストブロック」の二つの陣営に分かれていて、覇権争いが絶え間なく繰り広げられている。本作発表当時が冷戦時代だったコトを鑑みればむりない設定だ。その中でウエストブロックの女スパイである009ノ1の活躍を大々的にフィーチャーした....というより、やるせない読後感だけが支配する荒廃した物語。
けなすわけではない。それどころか、この独特の雰囲気がとてもよいのだ。ほとんどセリフを廃して、まるで映画の絵コンテのごときページにただよう「無常観」物語をこまわりだけで説明しきれずに、ページの半分を費やして文字で物語を説明している「無常観」そう物語全体を包み込むこの無常観こそが009ノ1の神髄である。
意味不明だって?そう、その不明感覚こそが009ノ1の世界観なのである。
モチロン女スパイであるから、それに伴いハニートラップも満載であり、必殺武器もお約束通り「オッパイ鉄砲」(正式名称はなかった)だし...たぶんサイボーグ(00ナンバーを持っているのだからそうだろう)だが、ほとんど特殊能力はなく(ハイジャンプするくらい)あとは解毒剤で毒攻撃から身を守るのだ(解毒剤じゃみもふたもないなあ...)
小学生時代に見たくても見れなかったマンガが、こんなにおもしろいモノだったなんて、石森章太郎は本当にスゴイ。というか、小学生時代に見ても理解できないって(ハニートラップ描写に胸躍らせるかもしれないけど)今現在44歳の自分だからこそ、評価できる内容なのだ。
自分の娘がいま小学5年生なのだが、もう数年すると、こんなマンガを読むようになるのであろうか?ソレを思うと当時の小学生はマセガキだったなあ...(イマノマセガキナラフジョシケイショウセツニナルノカ?)
普通の人には誰にも勧められないが、自分と同じ感性の人には大プッシュしたい作品です。石森章太郎は本当に素晴らしい。一体どういう風にアニメ化されているのか非常に気になる作品である。当地新潟では放送していないようだが....なにより幻の作品が廉価で復刻されてとてもうれしい。

009ノ1 (上巻) (単行本コミックス―角川マンガ)

009ノ1 (上巻) (単行本コミックス―角川マンガ)

009ノ1 (下巻) (単行本コミックス―角川マンガ)