「マルドゥック・ヴェロシティ」冲方丁

冲方丁版「甲賀忍法帳(山田風太郎)」あるいは「サイボーグ009石森章太郎)」
ご丁寧に「死なない忍者」(←忍法帳に出てた)とか「交ぐわる相手が死ぬ毒婦」(←忍法帳に出てた)とか「あらゆる顔に変身できる」(←009に出てた)とか特殊能力満載の登場人物達が忍者合戦をする...とりあえず「スクランブル09」だし「009」似てない?
本作は前作「マルドゥック・スクランブル」を読了してから読むこと勧める。ちなみに本作は「スクランブル」の続編ではなくて前日譚。まだウフココックとボイルドがコンビを組んでいた頃のお話し。
今更うだうだあらすじを説明するまでもなく有名な話なので、細かなことは抜きにしよう。何故ウフコックと彼の新しい相棒(バロット)にボイルドは討たれなければならなかったのかということを「スクランブル09」創設の物語に絡めて三巻に渡って説明している..と思って読み始めた。
前作との一番の違いは...「博打」はナシ...だ。
スクランブル」編では、博打シーンが物語の主要部分であり、SFっつより「カイジ」だろこりゃ〜てな展開で、コレこそが読者を掴んで話さないエンタテイメントだったのだが、今回ない。一体冲方くんはどんな技でもって読者を物語の迷宮に誘いのであろうかといやが上にも期待が増すのである。
ところで冲方先生、どうもまた執筆中に失踪したらしい...
ホテルを転々として、他の宿泊客にガンたれながら、荒みきった心で本作品を書いていたらしいことが、三巻ラストの後書きに表記されている。新幹線のトイレを占拠して、ラストのエピローグを書き終えた瞬間に「嘔吐」(コレは「スクランブル」の時の博打シーンを書き終えた瞬間と同じシチュエーションだ)したそうだ。居合わせた他のお客は、いつまで経ってもトイレから出てこない先客に大迷惑したであろう。
そんな迷惑にもかかわらず完成した本作。重い熱病にうなされながら見る幻覚のごとき物語は、着地点を見失いつつも、運命に導かれるごとき負のカタストロフィーに向かって自由落下していくのであった(意味深だが意味不明だなこりゃ)
とはいえ、三巻のはじめくらいまでは、割と普通の(拷問シークエンスは別として)ライトっぽい勧善懲悪忍者超能力合戦が繰り広げられるエンタテイメントなのだが...「一体この後ボイルドはいかにしてダークサイドに落ちちゃったのだろうか?」という興味がいやが上にも盛り上がる...かな?
事件の真相を知ったボイルドがとった行動は、つまり「おとしまえ」なのであろう。「スクランブル編」で究極の敵となったボイルではあるが、実はすべてボイルドの計算ずくのコトであったのだろうか?ひょっとしてすでに巨大意識の内にボイルドも気がつかないまま取り込まれていて、ソレが下す行動理論を自らの意志と思い行動していたのであろうか?(この辺は読んでね)
ライトノベルとばかり読んでいた物語が、訳のわからない巨大な渦巻き構造をしているワケなので、油断も隙もあったものではない。
意味不明な書評だが、こんなの所でいいだろうか?terraくん。「知ったような口をきくな」と椿三十郎のように怒られそうだが、かわいい女の子(バロット)の絵より、やはりハードボイルドな男(ボイルド)の絵の方が良いんじゃないかなあ...ちなみに本作品には挿し絵がありませんでした〜残念!!

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)