「双生児」クリストファー・プリースト

これが相変わらずのプリースト節なのであろうか。最初から異世界を散々振り回されたあげく、最後の数ページで阿空間のしじまへと突き落とされてしまう。
この小説を最初に読んでいれば、以前読んだ「奇術師」ももっと違った感想が出たであろう。そうか、つまりプリーストという作家はこういう作家なのだと、もっと簡単に理解できていたはずだ。
簡単におもしろいかおもしろくないかという観点から言えば「おもしろい」コトに間違いないのだが、余りに時空間が交錯しすぎていて、しかもソコに異世界が絡んできて、どこまでが小説世界の真実で、どれが虚構(あるいは錯覚)なのかわからなくなる。ところがそれはどちらもこの小説内では真実であり、それらの邂逅が小説冒頭に提示されてあるのだから、全くアンフェアなものではないのだ。
でも、わけわかんなさすぎますよ〜プリーストさん。
でも、そこまで計算し尽くして小説を書いちゃう人がプリーストなんだと。
訳のわからない小説と言ったら「ゴーレム100」(一月前にブログで書いたアレ)だが、決定的に違うのは、ぜんぜんワケわからないのに、ソコに描かれている短編的な章立てが、それぞれ結構読ませてくれるところだ。つまり「読者を置いてきぼりにしていない」ところが最大の違いであり、ソコをちゃんとするかしないかだけで、これだけの素晴らしい小説になるか、トンデモ小説になるかの違いだと思う。そしてその微妙とも思える違いをしっかり描ききれる技量こそが、傑作、駄作のボーダーラインとなることであろう。
といいながら、実は最後の後書きを読んで、改めてページをさかのぼり「ああ、そうだったのか!」と気がついた自分であるから(しかもソレも怪しい)ので偉そうなことは言えない。
なにせ、話の要約を書こうと思っても、一体どうやって書いたらいいかサッパリわからないのだ。あらすじが知りたい人は、下記のAMAZON経由で調べてくれ。きっと誰かがどこかで上手にあらすじを書いているはずだ。
つい意地になって難解な感想を書いてしまった。難解な文章というのは、物事をはぐらかすのに実に都合が良い。難解ぶってはいるが、要は内容が無いのである(ないようがないよう状態)おい!
傑作であることには間違いない小説だが、勧める相手を間違えると「何じゃこりゃ!」と怒られちゃう小説だ。

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)