「魔法」クリストファー・プリースト

だから、プリーストにオチの意外性なんか求めちゃいけないんだって。
話の瞬間瞬間で粋を読み取って楽しむのが正しいプリースト読書法であって「奇術師」のラストで「何じゃこりゃ〜!!」と思った時点で自分の負けである。
もう何冊もプリースト読んでいるにもかかわらず、自分はいまだ「奇術師」を引きずっているらしい。そういえば、ここ一ヶ月くらいプリーストしか読んでいないコトに気がついた。
なんかプリーストって村上春樹に似ていない?どうよ?
村上春樹ほどの癒しはないけど、村上春樹ほど謎の解読なしに読者をほおりなげはしない...けど、どちらも言うなれば「投げっぱなしジャーマン小説」だ(たとえが変か?)ワケワカンネエ...でもこの小説は比較的わかりやすい部類に入るんじゃないかな、プリースト的には。
魔法。自分の存在を不可視にしてしまう超能力。ソレを使える人間は先天的に存在していて、同じ能力を持つ人間にしか認識できない。そんな能力を持った三人の男女が繰り広げる愛憎劇。ところが主人公である男は、自分がその能力者であるということに気がついていない。気がついていないというより、普通人と不可視人の境界的な人間であった。そんな彼に恋をした不可視人の彼女には、もう長いつきあいの不可視人の恋人がいる。
その恋人は不可視人の中でも異能を放つ男であり、不可視人の中にあっても不可視でいられるほどの不可視能力を持つ。なんだから話がややこしくなる。
不可視人の話を一生懸命する彼女だが、まるで不可視人の存在自体が、彼女の精神的傷害がもたらす幻想ではないかと疑念する主人公。そういいつつも、主人公は不可視人の特性を無意識に実行してスクープを手にするジャーナリストのようだ。ソコに気がついた彼女は必死で不可視人の存在を説明するが、すればするほど泥沼。
で、例によってラスト数ページで意外な展開を用意するのがプリーストだ。
直前に読んだ「双生児」よりあきらかに読みやすい物語であったが、なんか「双生児」ってひょっとしたら歴史に残るスゴイ小説じゃないのかと思えてしまえる「魔法」であった。読者を文章の迷宮に迷い込ませ、煙に巻いているふうに見させておいて「悔しかったら、もう一度最初から読み直してごらん」と挑発しているような作品。
ソレがプリーストだ。
でも、そんな挑発にはのらないよ〜多分もう十年ぐらいしたら、ひょっとして読み返すカモね〜(←チョット意地になっている)
プリーストなんかダイキライだ!!
大好きになりそうだけど...(←おいどっちだ)

魔法 (ハヤカワ文庫FT)

魔法 (ハヤカワ文庫FT)