「アイの物語」山本弘

「クラートゥ・バラダ・ニクト」魔法の呪文ではあるが、このキーワードを聞いたアンドロイドは、その動作を強制終了する...そう、知っている人は知っている、コレは映画「地球が静止する日」で出てきたロボット「ゴート」を活動停止させるためのキーワードだ。
この様にいわゆるオタク心をくすぐるアイテム満載。文体もむしろライトノベルっぽい(自分的にはいまだにライトノベルの定義がハッキリしないが)取っつきやすい語り口で、結構深かったりするのは...あまりに「と学会」に深入りしすぎてしまった自分の深読みかもしれない。
いやまあ、おもしろいから問題なし。
でも深読みするとホントきりがない。この前作は確か彼の最高傑作(と自分は思っているのだが)の「神は沈黙する」...山本弘の宇宙観が全開していて、非常におもしろい(ネタバレは嫌いなので、興味ある人は読むように)そこでは確かに山本弘の宇宙観について詳しく表記されているが、じゃ、神はいったい何者なのよ?というところがまだ表現し切れていなかったように思えた。
そこで本書だ。
あ、ヤッパ神ってその辺に落ち着くのだねえ〜といった、山本弘の「神の概念」が非常にわかりやすく読みやすく書かれている。
つまりコレは非常にわかりやすい「ディアスポラ」(グレッグ・イーガン)なのだと!!
え、違うの?違うと思う人は、どんどんコメント欄に書き込んでください。
タダこれをもって「山本弘グレッグ・イーガンのパクリをした」なんてかいちゃう人は、間違いなく「ディアスポラ」も「アイの物語」も読んでいない人だ。何と言ってもディアスポラ...は、難しすぎます。やはりここは(アカデミー出版じゃないけれど)超訳してくれる人がいないとまずいんじゃないかと...どちらにしろ作者の意図をひん曲げてでも読みやすくする「超訳」というシステムは、原作者も翻訳者も疲弊するだけであって、困難きわまりない。その分読者はわかりやすく作品世界に入り込めるけど....と言うわけで本書だ。実にわかりやすいオリジナル小説である。でも結末だけを見ると「ディアスポラ」だ。ソレをものすごく日本風にアレンジして、原型をとどめないくらい改編した物だが、でもソレはそれで感動的なおもしろいお話しに仕上がっている。
ディアスポラ」のパクリ?ソレはソレとして、おおらかに受け入れちゃってはどうであろうか?確かにこれは全編「萌え」要素であふれていて、語り部の軽妙な物語に、なにも考えずにゆだねてしまえば感動的な物語だ。まさにシェエラザードに魅せられてしまった国王である(シェエラザード...?山本弘って男だけど...)
そんなわけで「クラートゥ・バラダ・ニクト」というせりふが出てきた時点で、元祖オタクたる(←おいおい)自分としては「山本もうなにやってもOK!!」という気分。例によってオビには「もうコレをもって今年のベスト1」とかいうあおり文句が踊っていますが、そりゃいいすぎ。モチロンベスト1ではないけれど、ベター1であることは間違いない一冊である。
2006年の作品なんだよね..よむのおそすぎた!

アイの物語

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