「砂漠の惑星」スタニスワフ・レム

前回読んだ「ソラリスの陽のもとに」があまりにおもしろかったので、「エデン」と共にレムの異生命体との接触三部作(←変なフレーズだ)の「砂漠の惑星」も読みたかったのだが、地元市立図書館にはないようだった。ところがちょっとそこでひらめいたコトがあった。確か図書館には早川の世界SF全集がそろっていたけど、そのレムの巻に「砂漠の惑星」が収録されていなかったか?
さっそく図書館で探すと、思った通りありました。冴えているぜ、自分。
早速読んでみると、これがまたあまりのおもしろさに、一気に読了。あのエデンのおもしろくなさがまるでウソのような傑作だ....というか、確かコレ高校生の頃読んだような気がするのだが...あのころはどこがおもしろいのかサッパリ解らなかった。若気の至りだねえ。
さて本作で今回、人類が接触する異星生物は無生物だ。文章がチョットおかしいぞ。つまり生物ではなくて、かつて異星人が残していった機械が、進化論の法則にのっとり、自然淘汰よって完成した究極機械なのだ。その一つ一つは蝿のように小さく、全く無力に思えるが、それらが集団で行動することにより高度知性を発揮し、生命体への致命的な攻撃を仕掛けるのだ。人間の考え得るすべての攻撃をことごとく跳ね返し撃滅するその存在はまさに「無敵」そしてその星を訪れた恒星間航行船の名前もまた「無敵号」そして邦題では砂漠の惑星とされているタイトルも、直訳では「無敵」とまあとにかく、かなわない存在なのである。
高校時代のことをふと思い出した。何でこの本を読もうと思ったかというと、当時フランク・ハーバートの「砂の惑星」(カイル・マクラクラン主演で「デューン」という映画にもなった)を読んでいて、それにものすごくタイトルが似ているので、つい読んでしまった...タイトルが似ているからといって内容が似ているわけはあり得ない。
何といっても共産国発のSFという作品の持つスタンスに理解できるほど高校生当時の自分には蘊蓄もなかったわけだ。今なら「不思議惑星キンザザ」も大好き中年だったりするわけで、旧共産圏もOKなのだが(←どうも話が変な方向だ)
つまり本書もSF的設定のおもしろさもあるのだが、それに加えて、メンツを重んじ、危険な惑星にもかかわらず脱出しようとしない隊長に不満を感じつつも、なんかうまい具合に隊長に言いくるめられて、危険な仕事を自ら買って出るハメになってしまう主人公などという、実に人間くさいというか官僚主義的というか、そういうにおいを故意に作中に振りまいて、奇妙なリアリティを醸し出すところがレムの「憎いぜコイツ」ってなところだ。
実はこういった旧共産圏アートにはまりつつあるんだよねえ〜最近の自分。

砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)