「擬態」ジョー・ホールドマン

う〜ん....
SFというジャンルは日本で考えている以上に世界的にいきづまっている文学ジャンルなのかな〜と思える一冊。今更SFってジャンル別けしなくても、おもしろいモノがおもしろいという風潮だし、誰も「バットマン」を指してアレはSFって言う人もいないし。SFがこんな不遇なジャンルになってしまったことに、チョット寂しさを感じてしまった。
そんな寂しさを再認識してしまった一冊。
あらすじ...
人類の有史以前の地球にメシエ星雲から到達してきた異星人。いや人ではない。あらゆる生物、無生物に擬態できる能力を持つ異星生物がその長い年月を海底で魚類に擬態することで暮らしてきたのだが、近年になり、この地球の食物連鎖の頂点に君臨する人類に擬態することを覚えた。その後、数々の人間の愚行を身を持って体験してきた。そんな月日が流れたある日、深海に人類では製造はおろか破壊もままならない謎の物体が発見される。コレはいったい何なのであろうか?悠久の時間を地球生物に擬態することによって過ごしてきた異星人は、ひょっとしたらコレは私の出自に関する謎が込められているのではないかと感じるようになっていた。あまりに長い間地球生物に擬態し続けていたため、彼(彼女?)はいかにしてこの地球にやってきたのか記憶をなくしてしまっていたのだ。
折しも似たような擬態能力を持つ「カメレオン」と呼ばれるモノも登場する。同じようにこの謎の物体に興味を引かれるが、この二人が邂逅するときにすべて御謎が解き明かされる!!
途中のエピソードはかなりおもしろいのだが、ラストの唐突な感じは、そこまでおもしろく物語を紡いできたのにもったいない!!とおもわせる。まるで80年代のカンフー映画のように「え、コレでお仕舞い?」と思いたくようラストにだけは憤慨した。そのくらいあっさりしすぎなのだ。物語にけりがついたと同時に「終劇」ってスクリーンにどーんと文字が出てくるような...ソレまでスゴク良い感じで話が進んできただけに、もったいない。
生物でも無生物でもなににでも擬態できる能力。コレはつまりターミネーター2に出てきた「液体ロボット」である。せめてあと100ページほど悪あがきをして話の厚みを加えてもらえたなら、それなりに名作になっていたかもしれない。
とはいえあの伝説のネビュラ賞受賞作.....ヽ(´ー`)ノ
本当にSFて終わったジャンルなのか?
そういえば先日図書館で「2008 SFが読みたい」を拝見すると、この年度の二位に「ゴーレム100」アルフレッド・ベスターが入っていた。よりにもよって洋書部門で第二位である。あんなつまらない、クソつまらないSFが二位にはいるくらいSFというジャンルは行き詰まっているのだ。「ゴーレム100」まだ読んでいない方にはもちろん勧めないし、書店で見つけても、結構高い装丁だし。買うより図書館で借りることをオススメする。もし見事読了できたら拍手を送ろう。何じゃこりゃな小説で、何でこれが第二位じゃと怒りに震える。
ちなみに一位はクリストファー・プリーストの「双生児」コレは文句なし。素晴らしい作品である。
というわけで、本書「擬態」は、まあそこそこ及第点で、そんなに目くじらたててあら探しをすることもないし、それなりにおもしろかった。
でもネビュラ賞...ネビュラ賞ってよく聞くけど、結局どんな賞だったっけ?

擬態―カムフラージュ (海外SFノヴェルズ)

擬態―カムフラージュ (海外SFノヴェルズ)