「異邦人」カミュ

ご存じ「太陽のせい」で人を撃ち殺しちゃった話。
そのくらいしか知らなかったものだから、もう少し知ろうと何となく読み始めた。最近は古典名作と呼ばれる本をよく読む。作に読んだ「白夜」もそうだったが、この本も120ページほどの非常に薄い本だ。すぐに読了したが、虚無感。
母が死んだ翌日に、かつての職場の女性と関係を持ち(主人公は恋ではないと言っている)彼女に結婚を申し込まれ同意する。同じアパートにというだけで特に親しくもない男がいて、かなり怪しい仕事(女衒)をしているようだ。特になんの感情も抱いていないが、なぜか好かれる。またここにはいつも犬を虐待している老人がいるが、ある時、犬が逃げてしまい老人は大いに悲しむ。犬の探し方をちょっと教えたら、やたら感謝される。本人の空虚な心持ちとは裏腹に、妙に人にはもてるようだ。
そこで、この女衒の隣人がアラビア人とトラブルを起こす。主人公は、特にこの男と親しかったわけではないのに、何故かこのアラビア人を撃ち殺す。
全編主人公にまったく読者が共感することを拒むような人物描写でつづられる。
物語後半、逮捕後裁判となる主人公だが、あまり裁判に感心を持っていな。なぜアラビア人を殺したのか、本人もサッパリわかっていない様子。そこで登場する有名なセリフ「太陽のせいだ」これも実にさらりと、あっさりと表示されているので、うっかりすると読みすごしてしまいそうだ。
本当にこれが世界に名だたる古典名作なのか。自分はよく理解できていない。多分ものすごい重要な事柄が隠されているのではないかと思うが、自分は気がつかなっかた。多分その辺の重要なことは、ネットで検索すれば、どこかで誰かが言及しているだろう。
ソレを参照して欲しい。
物語のラスト。それまで何事に関しても無関心、というか、まるで自分の事を人ごとのよう感じることしかできなかった主人公が、処刑を前にやってきた司祭に対して、突然怒りを爆発させる。悔い改め、神の御許へ行かれんことを祈るためにやってきた司祭に対し、物語中に唯一、主人公が感情をあらわにした。
意味はよくわからないが、何となく共感できるような気がした。何でだろう?
「いかようにも解釈可能な不条理小説は聖典となりうる(一例「黒死館殺人事件小栗虫太郎)」なんて考える自分も、ちょっとかっこつけすぎかもしれない。かっこつけの一冊として読まれてみるのも一興。

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)