「貧しき人びと」ドストエフスキー

文豪ドストエフスキーの処女作にて出世作。幸薄い貧しい男女が往復書簡という形で物語を綴るというかなりの意欲作。雰囲気は先日読んだ「白夜」に似ていなくもないが、こちらの方が圧倒的に素晴らしい。ま、どちらも救いがないことではあるのだけれど...救いのなさは、こちらの方が100倍くらい無い。
ああ、もう貧乏はイヤだ。
全体にゴーゴリーの「外套」を思わせるような作品だ。主人公のマカール・ジェーヴシキンの職業が、外套の主人公アカーキ・アカキエヴィッチとおなじ書記官(与えられた文章を清書するだけの仕事)だ。本編中にも外套に言及するマカールの意見(わざとピントはずれな意見にしてあるようだけど)があったり。外套自体が非常に短い作品なので、それをリスペクトしてドストエフスキー流に作り直したのかな?いや、どうもゴーゴリーに敵対しているふうにもとれないこともないし...正直この辺はよくわからないので、研究者のご意見を探してみたい。
え?ラスト...ラストはもちろん悲劇的に終わるに決まっているじゃないか。何せバリバリのロシア文学だ。ハッピーエンドなロシア文学なんぞロシア文学の風上にも置けない。
ってなわけで、救いはまったくありません。
でもってこの主人公のマカールってのが、どう見ても自分と同年代の40代半ばで、その手紙の相手のワルワーラはそれより一回りを遙かに上回る年下...バリバリの『老いらくの恋』で、はじまったときからとてもしあわせになれるとは思えない。ああ、なんか身につまされて、イヤダ、イヤダ!(←おいおい)
そーいや『老いらくの恋』ひとつねえや、自分。(←おいおい)

貧しき人びと (新潮文庫)

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