『スローリバー』ニコラ・グリフィス

なんとか賞受賞とかいううたい文句に読み始めたけど、いやまあ、いいんじゃないですか?
なんかこういうアンチもの、最近読むのがしんどいんだよねえ...

スロー・リバー (ハヤカワ文庫SF)

スロー・リバー (ハヤカワ文庫SF)

『影男』江戸川乱歩

本当にシチュエーションの設定と、物語の導入部の素晴らしさは乱歩先生にかなう作家はいまだにいないのじゃないか。
その分ラストは、おざなりです。
ああ、もう、ほんと!!ラスト間際に出てくる明智小五郎!!お前は出てくるな!!明智小五郎ってこんなにヤナやつだったっけ?この読後感は「パノラマ島奇譚」といっしょだ。背徳OK。エログロOK。そんな世界観に唐突に現れた絶対正義の明智先生が、物語を強制終了するというスタイルを、乱歩先生が後年に開き直って多作しなければ....
と、晩年乱歩に文句たらたらだったのは昔のはなし。いまではそんな乱歩先生のヘタレぶりまで愛せちゃうようになってしまうのだから...大人になったもんだ私も(←そうか?)

影男

影男

『モンゴルの残光』豊田有恒

これが意外におもしろかったので驚いた。確か処女作。最初の作品にはその作家のすべてが込められているとは、よくいったものだ。
このころ、日本はSFブーム黎明期。まだ宇宙戦艦ヤマトイスカンダルに向かって発進していなかった頃だ。そういえばヤマトの初期設定などは豊田先生が深く関わっていたはずだ。
正直、松本零士がかかわってくれて良かったよ(←その後グシャグシャなので、まさに塞翁が馬)
確かこのころは「夏への扉」(ハインライン)などのタイムパラドックスものが日本SFの流行だったようで、そんななかの「なかったはずの時代物」というスタンス...途中からタイムマシンとか出てきてややこしくなるけど。でも、意外に破綻せずしっかり話が完結しているところがとても好感もてました。
ただ、現在では入手困難でしょう。たぶん図書館の蔵書などで、書庫の奥深くに眠っているかもしれませんので、ちょっと司書さんをつついてみよう。

モンゴルの残光 (ハルキ文庫)

モンゴルの残光 (ハルキ文庫)

『生き地獄天国』『悪の枢軸を訪ねて』雨宮処凛

新潟日報に連載を持っている雨宮処凛の初期作品集。最近のちょっとこなれた感へたどり着く手前のかなりぎらぎらしていたころ。そう人間ってそういうころってだれにもあるさ〜ただソコでの行動がとても常人ではないところが雨宮処凛の魅力である。最近の悟りきったようで、枯山水のような新潟日報の連載の人とは、とても同一人物とは思えない...それが人生のわびさびってヤツなんだろうな(←意味不明)
とりあえずフォローし続けますので、あまり頑張らず、自然体でやり続けてください。

生き地獄天国―雨宮処凛自伝 (ちくま文庫)

生き地獄天国―雨宮処凛自伝 (ちくま文庫)

悪の枢軸を訪ねて

悪の枢軸を訪ねて

何度目だ!!『黒死館殺人事件』小栗虫太郎

はい、三度目です。趣味人の方々からしたら、まだたいしたことない回数です。
三回読んでようやく気がついたこと、それは、かなりインチキ臭いことが満載だな、と。
文章からしてよみにくい(小栗さんは得てして「悪文」の代表とされている)のに、その中に虚実おりまぜて書いているので始末が悪い。全く知識がないこちらとしては、かなりの確立で「へ〜そんな蘊蓄があるのか」とおもわせぶりな、嘘八百である。
もっとも、もとからのフィクション小説であるのだから、嘘だらけじゃないかと文句を言うのはお門違いである。(例、宇宙空間を光速を越えて飛び交う宇宙船...)
三回読んでやっと気がついた。コレは探偵小説というなのSF小説なのだと!!
名探偵が殺人現場にある謎を最後に解決するのだが、そのことことごとくが嘘っぽい。
栗先生は最初から「事件があってそれに対する明確な犯人とトリックを解明する」というミステリの大原則をなききものにしたところから、この物語を始めているのだ。犯人もトリックもどうでもいい。一番大切なことは...
この物語がココに存在することが至上である。
ああ、わけがわからない。
ただ今回読んだのは今でも普通に販売されている河出書房版。その解説を澁澤龍彦が書いているのだが、普通のミステリではありえない解説なのだ。
「物語の面白さとは全く関係何ので書いとくけど、犯人は○○だよ」とネタバレ。
いや、全くその通りなので、澁澤先生の掟破りにも「そう、それで?」といった感じだ。
こんな小説に、うっかりハマッテしまい、何度も何度も読み返している私には未来があるのであろうか?

黒死館殺人事件 (河出文庫)

黒死館殺人事件 (河出文庫)

『火星の秘密兵器』エドガー・ライス・バローズ

何年かぶりにようやく読んだ火星シリーズ。実はこの一冊だけが地元の図書館に蔵書されてなくて、読むことができなかったのだ。コレにてようやく火星シリーズコンプリート。本書の内容は、とくに読まなくても「火星シリーズ全部読んだよ!」と言ってまったく差し支えないない。(←おいおい)そんなところもついついゆるせてしまえるところが火星シリーズの醍醐味でもある。ひょっとしたら世界のどこかにはまだ未読の火星シリーズがあるのかもしれない。そして読んでも読まなくてもあまり大差はないのであろう(←おいおい)
いや、でも、大好きだよ!バローズ万歳!!

火星の秘密兵器―合本版・火星シリーズ〈第3集〉 (創元SF文庫)

火星の秘密兵器―合本版・火星シリーズ〈第3集〉 (創元SF文庫)

『魔都』久生十蘭

久生十蘭に100ページ以上の作品を書かせちゃダメだ。
てなわけで、何だかよくわからない事件が多発してよくわからないうちに終わってしまった。さわかな読後感とか、謎解きのカタルシスなどを求めている人にはお勧めしない。自分の場合、途中でしばらく放りだしてしまっていた。結局読了まで一年以上かかってしまった。
主人公は存在感稀薄な新聞記者。推理はずしまくりの名探偵警部。本当に王様か?と言うような、某南国の王様。ほんものとにせものの王様が錯綜する高級ホテル。巨大なダイヤに飛び降り自殺。歌を歌う鶴の彫刻がある公園に大挙して集まる群衆。そこに屋台なども沢山あらわれ、さながらお祭り。いつのまにやら迷宮と化した東京の大地下。
などなど、なにやら怪しい複線が大量に張り廻らされているのだが、果たして回収し切れているのやらどうやら。
初出は連載小説だったようだが、久生十蘭に連載頼んじゃダメだ。
その昔「真説鉄仮面」ってのを読んだときにも感じた、お話し途中での「投げっぱなし感」ちょっと私にはマニアックすぎてついて行けない...長編はヤメヤメ。今度は短編を読もうっと。

魔都―久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)

魔都―久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)