今日のバローズ

 さて全シリーズ中もっとも変なタイトル「火星のチェス人間」だが、内容もかなりヘン。二部構成になっていて、前半はチェス人間の話ではない。それは後半から始まる。しかも初の女性主人公(カーターの娘、ターラ)現在の小説なら野郎どもをばったばったとなぎ倒す女性戦士がいても特に違和感ないのだが、バローズの頃はそういう発想は無かった。ターラも威勢だけはいいが腕っ節はサッパリなので、前半はピンチの連続。さすがに物語りの進行に支障をきたしてきたので、後半にはそれなりの青年戦士がヒロインの聞きを助けて大活躍となるのだが...
 サスガにこの辺になるとバローズも食傷ぎみか...いや、前半はおもしろかったのですよ、前半は。登場してきた「胴だけ人間と頭だけ人間」究極進化の姿〜イカレポンチです。生体マジンガーZ状態。こういう発想は大好きです。しかも前述のとおりヒロイン、ターラはピンチの連続。いくら何でもピンチすぎ。実際チェス人間のエピソードなくて、これだけで一冊にして欲しいくらいだ。
 問題のチェス人間。エライ期待していた割にはその正体は山形県天童市などで毎年行われている「人間将棋」である。あまりにまとも、あまりに当たり前すぎ。これではバローズの名が廃るってモンだ。もっとも「チェス人間」と言うタイトルに過剰に期待した自分も反省だ。
 「火星の交換頭脳」いや〜これはいい。マジいい。いきなり交換頭脳である。交換授業や交換日記と訳が違う。どういう原理かはもっともらしい説明はあるが、要は外科手術で脳を交換してしまおうという話。例によって火星に幽体離脱ワープしてきた新ヒーローがついたところは異様な姿の科学者の実験室。そこでは今まさに年老いた女王の脳を、若き美女の肉体に交換しようとしている所。そして年老いた女王の体には、哀れ美女の脳が交換されてしまった。
 さあ、ここだけ読んだだけでワクワクドキドキでしょう。実にこのドキドキが最後まで続き、久しぶりに一気読み。第一作「火星のプリンセス」以来の最高傑作ではないか?
 ところで、あまりに話が面白すぎて主人公の名前を忘れてしまった。てか、主人公は作中ではそのマッドサイエンティストが付けた名前でずっと呼ばれていたので、本名は2〜3回しか出てきていない。忘れる前に、憶えていない。
 この怪設定と話のぶっ飛びぶり、そしてご都合主義もここまで徹底していたら素晴らしい。最高だ。