「独白するユニバーサル横メルカトル」平山夢明

今読んでいる「カラマーゾフの兄弟」が、どうでもいいけど長いんだ。しかも岩波版で一巻のほとんどを読んだにもかかわらず、あまりのわからなさにもう一度新潮版で読み直している現在だから、やたら時間がかかるわけだ。
内容はおもしろいのだが、いい加減飽きてきた(まだ新潮版の上巻を読み終えていないのだが)そんな状況なので、息抜きに違う本を読んでみた。こういう行為を苦手な人もいるが、自分は案外平気。そこで息抜きに選んだのが本書。新刊だが、たまたま図書館に予約していたら、空きが出て借りることができた。早速読んでみた。感想はというと...
読まなきゃよかった!!
書店で展開されているPOPからしてすでに「賛否両論絶賛の嵐」とか訳のわからないコトが多かったので好読心あおりまくり倒しである。オマケに推理作家賞も受賞して、オビには有名作家の絶賛の嵐なのだから、コレは読むしかない!!と、思うのも無理はない。
肝心な本編だが、これまで作者がつづってきた短編集である。ひょっとしたら傑作選なのかもしれないが、あまり作者のことを知らないので何とも言えない。アイディア一発勝負もあれば、どこかで読んだようなシチュエーションをうまく料理したモノとかバラエティに富んだ作品が多い。
最初の「ニコチンと少年」を読んだときにちょっと「いや」な予感はしたのだが、続く「Ωの肖像」がグロなりにも結構まとまった作品(書店のPOPではイチオシ)だったので、気を取り直して続きを読み進めたワケだ。「無垢の祈り」はまあ、普通の短編小説で、「オペラントの肖像」はオーウエルの「1985」を作者なりにアレンジしたものだろうし、「卵男」は同じくレクター教授へのオマージュであろう。「すまじき熱帯」...?
表題作「独白するユニバーサル横メルカトル」はそのタイトルがぜんぜん意味不明だったが、読み始めてやっと理解した。ネタバレだが、ま、いいだろう。要はメルカトル図法。地図だ。地図帳が意志を持って告白する、強いて言えば地図帳が人格を持ち、語る「メタ小説」だ。オチはともかく、メタ小説として結構おもしろく読んだ。
問題は最後の「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」だ。こっちの頭が溶けそうだよ...読まなきゃよかった。トラウマ小説だ。こんな小説ばかり描いていて頭おかしくならない?平山くん、と聞きたくなるような悪夢な作品集。そんなわけで多分賛否両論のはずだ。正直自分は好きになれないが、アイディアの秀逸さとソレを見事作品に昇華できる技術は認めざるを得ないであろう。
コレも小説だ。
さてカラマーゾフの続きでも読もうかな.......

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル