不条理本

*[読書]「ザップガン」フィリップ・K・ディック

前半はまるで読めた代物じゃない。前半分を書いたとき自分が何を考えていたのか、見当もつかない。前半分はまったく理解不能だよ。
 とは、作者ディックが自作「ザップガン」について語った言葉である。自分で言うなよ...まあ、そう言うだけあって本当に前半150ページはわけがわかりません。不条理でわけがわからないとか、謎が多くてわからないとか、そういう次元ではなくて文字通り「何が書いてあるのかわけがわからない」のである。かなり行き当たりばったりなのであろう。
 あらすじは、兵器ファッンションデザイナーある主人公は、トランス霊感により得たスケッチで兵器を作り出す、西側陣営の兵器開発スタッフの要だ。だが実は、兵器とは名ばかりのガラクタを作っているだけであった。そんなとき本物のエイリアンの侵略が始まり、それに対抗すべく敵側陣営である東側の兵器ファッションデザイナーと共同で、本物の究極兵器ザップガンを作らなければならなくなった...というもの。
 主人公の他に物語に重要な鍵を握りそうな人物が早々に出てくるのだが。一体どういう風に物語にからんでくるのだろうと思っていると、途中から姿を消す。どうなっているのだと思っていると、のこりまだ50ページくらいあるというのに、物語はほとんど解決されてしまう。え、と思っていると、先の人物が出てきて、あっさり排除される。???重要人物ではなかったのか?
 他にも、あまりに意外すぎる人物が突然時間旅行してきて、突然事件解決のヒントを与えてくれたり(伏線皆無)とか、要は「はちゃめちゃ」である。
 前半の苦行のような文章をクリア出来れば、後半は割とテンポのいい話になっているので一気読みできる。よくできた短編小説ネタを2〜3本分うまくつないだようだ。エイリアンもとうとうその姿を現すこともなく「高等頭脳をもった甲殻類」と、会話で説明されただけだし、あげく、そのエイリアンを撃退した兵器というのが「幼児用情緒教育玩具」をちょこっと改造しただけのモノ、というのがいかにもディック一流の冗談ようである。
 余談だが、タイトルにも使われている究極兵器「ザップガン」だが、物語中にはその姿をとうとう現すことはない。それどころか「ザップガン」という文字すら一回も出てこなかった...いいのか?本当にもう。
 まあ、フィリップ・K・ディックだから、なんでもありだ。このくらいでめげていては、彼のファンにはなれない。