「人は食べなくても生きられる」山田鷹夫

啓蒙する過激思想家。
つまりはクルクルパー。
半分ほど読み進めたところから「これは不条理小説だ」と思いこみ読む。すると、それなりに結構おもしろかったりする。もちろん実戦するわけない。うっかり本書に啓蒙された迷える子羊ちゃんたちはご愁傷様だ。てか、誰も実戦するわけないか。
↓まずは背表紙の写真(表紙をめくった最初のページにも同じモノクロ写真がある)

とにかくインパクト絶大な本書の背表紙の写真。これだけでトンデモ臭がプンプンだ。この本、トンデモ本年鑑のどこかに出ていなかったっけ?
タイトルが示すとおり「人は食べなくても生きられる」という思想を声高らかに出張する啓蒙書。とりあえず日本では表現の自由が保障されているので、なにを言ってもよし。でもねえ...そのことについてのツッコミどころは多数ありすぎるのだが、そんな些細な事はとりあえずおいておく。
ソレよりもココが一番のツッコミどころである。表紙にどでかく「不食」と出ているが、読んでみると、こいつはなんだかんだと言いながら、けっこう喰っている。自宅にいれば母親が食事を作ってくれて、当然(本人は愛のためと言っているが)喰っている。宴会に誘われることもあり、やはり喰う。くっさたマグロや、賞味期限を遙かに超えたカキ(非生食用)などを生で喰っている。不食すると体が毒素に対して抵抗力を持つので大丈夫なことを自らの肉体で実験しているのだそうだ。そうこう言いながら喰ってしまった後、やはり不食の掟に反しないよう、喰ったものをきっちり浣腸して排泄する。その専用の浣腸機も自身が通販しているから、アフターケアもバッチリだ。
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本書によると、彼はこの装置にはまってしまい二日に1回、その特製浣腸機を使用している。って事は二日に1回食べているって事か?....ヤッパ結構喰っているジャン。
どこが不食だ(あるいはただそのほうのマニア?)
名前でググルと、出る出る奇妙な商品群。
http://taka1107.shop-pro.jp/
名づけて「天才開花ツール」.....ヽ(´ー`)ノ
もうこの人をネットで観察するだけでエンターテイメントだわ。スピリチュアルエンターテイメント。トンデモ愛好家が涙を流して身悶えするよ。
どこを開いてもツッコミどころ満載な本書だが、肝心なこと、つまり実際の不食の実践方法などはあまり書いてない。不食に対する自らの思想が、そりゃもうウザイくらい繰り返し述べられているだけだ。「だから、不食ってどうするの」との答えとしては「自己責任で実験してくれ」とのことだ。本人からして結構喰っているのだから、方法伝授もクソもないか。
うっかりこの本に啓蒙され、変に信者とかが集まって、無人島などで集団不食実験とかやり出したら、間違いなくガイアナ寺院のような惨事になるだろう。また死人が出て、ひからびてミイラになっていても「コレは不食の効果で逆成長して細胞が若返っているのだ」とかなんと、どこかで聞いたことあるような展開が容易に想像できる。
本書によると不食を実践していくと、究極的に人間は脱皮するがごとく「精妙体」(筆者の造語)へと変態するのだそうだ。そんなものに変態しなくても十分変態ですよ、あなた。

人は食べなくても生きられる

人は食べなくても生きられる

そういえばオウムなんかも最初は奇妙なおっさんがヨガやりながら空中に浮かぶ写真が話題になった本が出版されたのがきっかけだったしなあ...何事もありませんように、ナンマンダブ。